真夏の着ぐるみバンド
その結果、20代の内に、本当に様々なバンドで演奏するチャンスをいただきました。その中でも、真夏の午後、灼熱の日差しの中、櫓の上に上り、サルの着ぐるみを着て演奏した「動物ぬいぐるみバンド」の仕事は、いまだに忘れられません。全身着ぐるみで覆われ、頭は巨大な張りぼてをかぶり、ぽってりとしたシルエットになるために、胴体に綿の入った「あんこ」を装着します。こんな感じです・・。
いや、当時の着ぐるみはもっと頭がでかくて、アンコもたっぷりだったと記憶しています。この状態ではストラップとか使えないですから、ソプラノサックスを頭の張りぼての隙間から口に入れ、隙間から外を覗いていました。そしてサルの着ぐるみですから、演奏したのはもちろん「アイアイ」です!「ア~イアイ、ア~イアイ、おサ~ルさ~~んだよ~」
演奏していると子供が近寄ってきます。中には真下まで近づいてきて、覗き込んでくるクソガキ、お坊ちゃんがいらっしゃいまして、「やっぱり中に人が入っているよ~」なんて大声で叫んで喜んでいます。こっちは慣れない着ぐるみで息苦しい中、必死でやっているのに‥。心の中で「子供は子供らしく、素直に喜んどれ~~」と叫んでいました。しばらくの間、子供嫌いになりました
演奏時間は30分だったのですが、とにかく暑かった!今までの人生で一番汗をかいたのではないでしょうか?あんこを装着するというのは、まるで布団を胴体に巻いているようなものです。そして着ぐるみ全体にほとんど通気性はありません。そして炎天下で30分さらされる・・。演奏後のスポーツドリンクが無茶苦茶美味かった!500mlを三口で飲み干しました!
プロってすごい!
私の場合、動物ぬいぐるみバンドはバイトみたいな感覚で、恐らく全部で10回も経験していないと思いますが、中には日常的にやっていた人もいるわけで、当時出会ったバンマスは随分と経験を積んでいた様子。
「俺は全身、掌まですっぽりドラえもんのぬいぐるみを着た状態でも、エレキベースを弾ける!」
この言葉を聞いたとき、プロの技ってすごいなあと、心から感激しました!
バンドのお仕事、諸々・・
他にも、遊園地、ショッピングモール、百貨店等、アトラクション系のお仕事は随分とたくさんいただきました。中年を迎えた今ではさすがに気恥ずかしさもあり、なかなかそういったお仕事をお受けしようとは思えないのですが、当時は何でもやっていました。
まあ、人様の前で楽器が演奏できれば、特に恥ずかしいなんて思うことも無く、むしろ楽しんで演奏していたのですが、それでも知り合いに出くわすと、かなり気まずかったですね。
栄のオアシス21ができる以前、その場所は一時、ちょっとしたお楽しみスペースとなっていました、フードコートやアトラクションスペースがあったり・・。そこで「リクエストサンタさん」に扮して、お客様からリクエストされたクリスマスソングを、アカペラで演奏するというお仕事がありました。ここで、当時教えていた生徒に出くわしました。「先生・・」という言葉の後、サンタ姿の私の前で絶句した彼とは、間もなく音信不通になりました。
今は閉めてしまった松坂屋名古屋駅店で、セール開催イベントの演奏を請けたことがありました。確かデキシーランドジャズバンドで練り歩きながら、音楽で賑やかす仕事だったと記憶しています。セールの初日、お店の開店時、オープンと同時に華々しく演奏スタート!・・気が付くと、すぐ前に嬉しそうな顔をした両親が立っていました。忘れていましたが、松坂屋名古屋駅店は高齢者のお買い物のメッカだったのですね。気まずかったです・・。
他にも、遊園地の音楽隊もやりました。当時空き地だった笹島のスペースを活用した、移動遊園地の「キ○○ス音楽隊」として、テレビのニュースで取り上げられたのを、たまたまジャズの師匠が見てたり・・。おかげさまで、本当に様々な経験ができました。続きはまた回を改めて・・