サックスのプロになる!①

どうやってサックスのプロになったのですか?」、このように尋ねられる機会は多々あるのですが、実はこの問いは、私、鈴木にとって難問です。「気が付いたらプロになっていた」としかお答えしようがないのです。

恐らく、私以外のジャズサックスサクソフォン)奏者に同様に訪ねても、答えは似たり寄ったりになるかと思います。少なくとも現代のジャズの世界においては、初めからプロになろうと思って、楽器に取り組んだ人は、ごくごく少数派となるはずです。音楽が、楽器が大好きで、練習にのめり込んだ結果として、演奏に対する対価、報酬がいただけるレベルに至った奏者が大半かと思われます。

バブル期のバンド界は人手不足

私がテナーサックスの練習にのめり込んでいた大学生時代、ちょうどその頃、日本はバブル経済、好景気の狂騒の真っ只中でした。盛り場には人があふれ、誰もがバンバンとお金を使っていたころです。

そうなると、バンドマン(この場合はナイトクラブその他で、生演奏を提供することを生業とする職業)の世界でも、新しい仕事現場、つまり生演奏を欲しがる(夜の)飲食店が増え、イベントその他での生演奏の需要は増大します。その結果、バンドマンの世界ではプロプレイヤーが足りない、人手不足の状態に陥ったのです。

楽器持って立っているだけでギャラ

撮影、越野龍彦氏
撮影、越野龍彦氏

そんな折、当時色々とお世話になっていた(一寸した演奏のコツを教えていただいたりしていた)プロサックス奏者を通じて、とある方から「吹けなかったら、楽器持って立って吹いているふりをしていればいいから、何月何日にこの店に行ってくれないか?ギャラは○円払うから」という電話がありました。当時の私は、ジャズ研所属の大学生(名古屋大学経済学部4回生)という、音楽業界的にはズブの素人だったので、かなり怯みましたが、半分興味本位で、社会勉強だと思い現場に向かいました。

今になって思えば、二十歳そこそこの若造が、リクルートスーツレベルの、着慣れない礼服をはおり、サックス片手にネオンちかちか輝く盛り場へ向かったのですから、ずいぶんと無茶をしたものです!

現場に到着してみると・・(次回に続く